不妊症の漢方治療について

高プロラクチン血症


プロラクチンは、母乳を出すホルモンですが、排卵を抑制する働きもあります。
産後、母乳を与えていると生理が来ないのは主にプロラクチンの為です。

プロラクチンは、脳下垂体から出るホルモンですが、それをコントロールしているのは視床下部です。
視床下部は、自律神経の中枢でもありますから、ストレスなどで自律神経のバランスが崩れると、
ホルモンのバランスも崩れて、高プロラクチン血症になると考えます。


プロラクチンは、感情との関係だけでなく、いろいろな新薬との関係も密接です。

分泌を促進するもの
 塩酸イトプリド製剤《消化管運動賦活剤》
 塩酸スルトプリド製剤《ベンザミド系抗精神病剤》
 塩酸ベラパミル製剤《フェニルアルキルアミン系カルシウム拮抗剤》
 ドンペリドン製剤《消化管運動改善剤》
 メチルドパ製剤《α−刺激性血圧降下剤》
 メトクロプラミド製剤《ベンザミド系消化器機能異常治療剤》 など。


分泌を抑制するもの
 塩酸タリペキソール製剤《非麦角系ドパミンD2‐受容体刺激剤》
 メシル酸ブロモクリプチン製剤《持続性ドパミン作動・麦角アルカロイド誘導体》
 ネモナプリド製剤《ベンザミド系D2−ドパミン受容体遮断剤》

一口に高プロラクチン血症と言っても、次の3種類あります。

 高プロラクチン血症
 潜在性高プロラクチン血症
 プロラクチノーマ

潜在性高プロラクチン血症は、数値的には正常でも、高プロラクチン血症と同じ症状が出るものです。
潜在性高プロラクチン血症の場合は、夜にプロラクチン血症が上がり、昼は正常近くなります。
また、プロラクチンに対する感受性が高まっている事もあります。
潜在性高プロラクチン血症を調べるには、ホルモン負荷試験を行います。
漢方的な治療は、高プロラクチン血症と差がありません。

プロラクチノーマは、脳下垂体の良性腫瘍です。
腫瘍による刺激の為、プロラクチンが大量に分泌されるものです。
この場合の漢方治療は、他とは異なりますし漢方の効果は出にくいもので、今回は割愛させて頂きます。




では、漢方ではプロラクチンの事をどのように考えているのでしょうか?

それを理解する為に、母乳の分泌を漢方的に説明してみます。

五臓六腑の余血は、衝脈に注がれます。
衝脈は腎につながっています。
衝脈が一杯になるとあふれ出して生理になります。

ところが、生理が止まっている状態ですと、衝脈にたまった気血津液は下にあふれ出さず、
衝脈とつながっている胃経にそってのぼっていきます。

胃経は、乳房につながっていて、衝脈から流れ込んだ気血津液は母乳になります。

ちなみに、男性では生理にも母乳にもならないので、さらに上って髭になるそうです。

このあたり、現代医学的な解釈と違いますが、これが漢方の考えです。

昔から、母乳が出ない時は、穿山甲、タンポポ、牛蒡子を使いました。
母乳を止めたいときは、炒り麦芽を使っていました。
プロラクチンというホルモンが発見されるずっと前から炒り麦芽は
母乳を止めるのに使われていたのです。


プロラクチンをコントロールしている視床下部は肝との関係が密接ですから、
プロラクチンもやはり肝との関係が密接といえます。
プロラクチンが高いと、基礎体温がギザギザになるのは、
肝鬱気滞と深い関係があるからだと思います。

乳房は胃経ですから、胃の働きをとも関係があります。(ちなみに乳頭は肝経です)

(プロラクチンを抑えるテルロンの副作用として吐き気がありまずか、
漢方的にはプロラクチンと胃が関係していると考えると理解しやすいかもしれません。)

漢方ではプロラクチンの改善をする場合、視床下部である肝と、
それの上部中枢の脳(心)、胃の3つを考えて治療する事が大切です。
視床下部型のところで「二陽之病発心脾、有不得隠曲、在女子爲不月」につてい説明しましたが、
これは、プロラクチンも関係があると思います。


基本的には、疏肝利気、健脾消導、安神の3つを体質や状況によって上手に使っていく事です。

脾の消導作用は、肝の疏泄によってバックアップされています。
心と肝との関係も密接な事から、これらの3つは、お互いに切り離せない関係になりますので、
全体のバランスを考えながら治療していく事が必要です。

なお、多嚢胞性卵巣で、高プロラクチン血症がある場合は、私は先に多嚢胞性卵巣を治療しています。
そうすると、自然にプロラクチンが下がる事が多いようです。