不妊症の漢方治療について その4 「視床下部型」


「視床下部型の漢方治療」

視床下部は自律神経の中枢です。
自律神経は漢方では肝の一部分と考えています。
私は、脳下垂体は、腎の一番深い部分で、これを腎精と考えています。
視床下部が脳下垂体をコントロールしているので、これを漢方で良うと、肝が腎をコントロールしているという事になります。

女性の先天は、肝だという説があります。
これは、肝は血と関係が深く、女性の生殖機能には陰血が不可欠な所から言われていますが、肝が腎をコントロールして、一定のリズムで排卵や生理を起こしている事とも深く関わりがあると思います。

視床下部は、脳の一部であり、大脳皮質の影響を受けています。
大脳皮質は、心の機能で、この事から、視床下部型の治療のポイントは、肝と心にあると考えられます。

LH−RHテストでも明かなように、視床下部方はGn−RHに大して脳下垂体も卵巣も正常に反応します。
ですから、現代医学的な見方からすれば、腎には問題が無い事になります。
しかし、漢方の場合は、肝腎同源というように、どこまでが肝でどこまでが腎か明確に切り離す事は出来ないので、やはり補腎も大切な要素になります。

ここで、面白い話があります。
徐昇陽さんという人が、武漢市中医医院の1985年の140例の不妊症の統計をとったところ、60%が肝鬱気滞、20%が腎虚、18.6%が腎虚肝鬱、1.4%が痰湿と分類されました。
しかし、1989年の統計では176例のうち、腎虚が44.3%、肝鬱気滞が35.2%、腎虚肝鬱が17.5%、痰湿が3%という結果でした。
4年間の間だに、患者さんがこのように変化するとは考えにくいので、中医師の辨証の違いによるものと考えられます。
つまり、専門の中医師でさえ、肝と腎の区別は有る意味難しいという事です。
ただ、肝腎同源というように、肝と腎は密接な関係がありますから、肝と腎は切り離して治療するより、セットにして考えた方が良い部分があります。
ちなみに、私の個人的な意見では、痰湿や淤血が原因の不妊症はこの統計よりもう少し多いように思います。


さて、肝の働きですが、大きく2つに分けられます。

「体」
 物質的に見た肝臓そのもので陰に属する。
 陰血によって養われている。
「用」
 肝臓の働きで、陽に属する。
 気の流れをコントロールしている。

この事から、肝の治療は、「養肝柔肝」と「疏肝利気」の2つになります。

養肝柔肝の代表が「四物湯」、「婦宝当帰膠」です。

疏肝利気には2つの方面があり、肝気虚による疏肝の不足と、疏肝の太過による気滞です。

次に心の問題です。
心は、漢方的には大脳皮質の機能も包含しています。
不妊症の時に、とても大きな問題は、「あせり」です。
周囲の友達が次々に妊娠していき、家族からも、意識的あるいは無意識的な催促を感じます。
このような状況で焦るなと言う方が無理かも知れませんが、焦りが視床下部に影響してホルモンのバランスを崩す事は良くあります。
内経では「二陽之病発心脾、有不得隠曲、在女子爲不月」と行っています。
つまり、思い悩む事があると、生理が止まるというのです。
あるいは、「月事不来者、胞脈閉也。胞脈者、属心而絡於胞中」とも言っています。
心を安定させる事が、月経周期を安定させるのに大切です。


勿論、弁病だけでなく、辨証も大切ですから、うまく弁病と辨証を組み合わせてお薬を選ぶ事が大切です。

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